だしや健康食品にも!?知られざるプリン体の多い食品
2020.08.27
痛風とセットのイメージが強い「プリン体」。色々と誤解が多い「プリン体」について解説していきます。
プリン体とは
食事から摂取するプリン体は、尿酸を作り出す原因物質の一つです。尿酸は毎日体内で合成され、不要分は体外に排出されます。
通常、体重65kgの成人男性で体内には1200mgの尿酸が蓄えられており、1日に尿から400~600mg、便から300mgが排泄されます。しかし、尿酸が過剰に合成されたり、尿酸の排泄が減ったりしてしまうと、体内の尿酸量が1200mgを超えると同時に血液中の尿酸値が上昇し、高尿酸血症(痛風)となってしまいます。
尿酸が過剰に合成される
・激しい運動
・飲酒
・大食い
・プリン体の過剰摂取
尿酸排泄を低下させる
・飲酒
・肥満
・水分不足
・腎機能の低下
これらが積み重なり、尿酸の過剰合成・尿酸の排泄低下が生じ、痛風につながってしまうのです。最近は食品から摂ることによってつくられる「尿酸」よりも、体内でつくられる「尿酸」の方が多いということがいわれており、痛風=プリン体制限のみ、というよりは食事のエネルギー量などバランスを整えつつ、プリン体の多い食品は避けるという食事療法になってくるかと思います。
今回はこの中の尿酸の過剰合成を防止するために「プリン体が多い食品」を確認していきましょう。
気を付けたいプリン体が多い食品トップ3
プリン体は1日400mg以下というのが目安になってきます。この数値は暴飲暴食をせずに普通に食事をしていれば、それほど厳しい制限ではありません。
食品100g当たりに200mg以上のプリン体が含まれている食品は「高プリン体食品」として注意が必要です。
プリン体が多い食品その① ”レバー”
お肉の中でも鶏肉が一番多いです。ただ、他の豚肉や牛肉のレバーも同様に注意が必要です。
食品 | 100g当たりのプリン体量(mg) |
鶏レバー | 284.8 |
牛レバー | 219.8 |
豚レバー | 312.2 |
プリン体が多い食品その② ”干物”
アジの干物、サンマの干物など魚の干物にはプリン体が多く含まれています。
食品 | 100g当たりのプリン体量(mg) |
マイワシ | 305.7 |
マアジ | 245.8 |
サンマ | 208.8 |
プリン体が多い食品その③ ”酒の肴”
居酒屋で人気のありそうな「あん肝」や「白子ポン酢」。習慣的に食べているという方は少なそうですが、お酒が進むとたくさん食べてしまいそうなお料理ですよね。こういった珍味や内臓系、また下記の魚介類は比較的プリン体が多い傾向にあります。
食品 | 100g当たりのプリン体量(mg) |
イサキ(白子) | 305.5 |
あんこう(肝)酒蒸し | 399.2 |
カツオ | 211.4 |
マイワシ | 210.4 |
大正エビ | 273.2 |
お肉・魚は、食べるときの1回量が多いため、これらの高プリン体食品を摂りすぎてしまうとプリン体の過剰摂取につながります。習慣的に摂取していないか確認してみましょう。
だしや健康食品にも!?実はプリン体が多い食品
ここからは、知らずに摂っているかもしれない”隠れプリン体が多い食品”を紹介します。知らず知らずのうちに過剰摂取になっているかもしれません。
隠れプリン体が多い食品その① ”だし”
プリン体は水に溶ける性質があり、プリン体を多く含んでいる食材を使って摂った「だし」にも少なからずプリン体は含まれていることになります。プリン体は煮干しや鰹節、肉類などに多く含まれるイノシン酸・干ししいたけに含まれるグアニル酸、酵母RNAの分解物のキサンチル酸などの”旨味成分”として含まれています。
「かつお節」や「干ししいたけ」、「煮干し」など天然のだし、また「だしの素」や「コンソメ」、「うま味調味料」など旨味を引き出すような調味料や、じっくり煮込んで旨味がでているラーメンの豚骨スープ、煮干しスープなど、少々プリン体が多そうだということが分かりますね。
だし | 100g当たりのプリン体量(mg) |
昆布(乾燥) | 46.4 |
かつお節 | 493.3 |
煮干し | 746.1 |
干ししいたけ | 379.5 |
だしの素 | 684.8 |
コンソメ(粉末) | 179.8 |
注意※調味料以外はだしをとるために使う食材100gあたりのプリン体量になりますので、参考値としてみていただければと思います。
ただここで注意をしていただきたいのですが、昆布やかつお節、煮干しなどはだしをとるために使うだけで、食材そのものを食べるわけではなく、調味料の方も100gも一度に摂ることはほぼないと思いますので、そこまで神経質になる必要はないということです。
尿酸値が高い方は、例えば味噌汁のだしをかつおから昆布に変えてみたり、ラーメンのスープは飲まないようにしたりするなどちょっとした取り組みで食事を変えていけると良いと思います。
隠れプリン体が多い食品その② ”健康食品”
何かの検査数値が高かった際に、いつも摂っている健康食品が原因だったということは少なからずあることだと思います。種類によっては健康食品にプリン体が多く含まれていることがありますので注意しましょう。
健康食品 | 100g当たりのプリン体量(mg) |
クロレラ | 3182.7 |
ローヤルゼリー | 403.4 |
ビール酵母 | 1206.2 |
スピルリナ | 1076.8 |
プリン体が少ない食品
ここからはプリン体が少ない食品を紹介していきます。食品100g当たりにプリン体が50mg以下の食品です。
野菜類(一部例外あり)、きのこ(干ししいたけ・ひらたけ以外)、もずく、卵、牛乳、豆腐、イクラ、すじこ、数の子、練り物類(ちくわ、かまぼこ、魚肉ソーセージ等)
中でも卵や牛乳はなんとプリン体ほぼゼロ!特に牛乳の方は痛風の発症抑制に有効であるという報告があり、摂取が推奨されています。
牛乳とよく比較されるのが「豆乳」ですが、豆乳もプリン体が極めて少ないことには変わりありませんが、ゼロではないので、『牛乳』がお勧めです。
また、魚卵というとプリン体が多いイメージですが、イクラ・すじこ・数の子は極めて少ない部類に入ります。たらこや明太子は100g当たり100mgを超えてきますので、食品によって異なることが分かります。プリン体が極めて少ない食品の中には「肉」や「魚」が殆ど入っていません。肉や魚の多くは100g当たり100mg以上のプリン体を含みます。
そのため、肉や魚の食べすぎはプリン体の過剰摂取につながりやすいということがいえます。
まとめ:プリン体の過剰摂取を防ぐには?
さて、いかがだったでしょうか。「プリン体」についての理解は深まりましたか?
・プリン体が多い食品
レバー、干物、白子、あん肝、魚介類(カツオ、マイワシ、大正エビ)
・隠れプリン体が多い食品
だし類、うまみ調味料、健康食品
・プリン体が少ない食品
鶏卵、牛乳、野菜類、きのこ類、イクラ、すじこ、数の子、練り物
→特に痛風発症抑制には牛乳がお勧め
・肉や魚には全体的にプリン体が多いため、食べる量に気を付けることがプリン体の過剰摂取を抑えることにつながる
今回プリン体の多い食品と少ない食品を紹介しました。しかし、プリン体が多い食品を控えて、少ない食品を摂るという考え方ではなく、冒頭でお話ししたように食事のエネルギー量などバランスを整えつつ、プリン体の多い食品の習慣的摂取は避けるという食事療法を行うことが最も大切なことです。エネルギー量や栄養バランスを正しく保った食生活の中の食品選択でプリン体の多い少ないが考えられると良いですね。
情報提供元:メディカルフードサービス 管理栄養士